今回は実際にESを書いてみたものを比較して、ESを書く際の注意事項やポイントなどをまとめていきたいと思います。
Podcastでも実際にESの骨組みを作ってトークしていますので、よろしければ聞いていただけると嬉しいです。
今回のESのテーマ
あなたが学生時代にチャレンジしたことや困難を乗り越えた経験の中で、一番頑張ったと思えることを教えてください。(400字)
今回は「ガクチカ」でESの比較をしていこうと思うのですが、「経験」がESで異なると比較しづらいので、4人とも同じ「経験をした程」でESを書き、どれくらい具体性に差が出てくるのかを分析してみようと思います。
テーマ1: 居酒屋のアルバイトで、お店の課題であった「お客様のリピート率」を向上させたこと
4人の中で1人は本当に居酒屋でのアルバイトをやっていて、上記取り組みをしています。しかし、3人は居酒屋でのバイト経験は全くありません。
居酒屋バイト未経験AさんのES
私が勤める居酒屋には当時、原因は明確化していないがお客様の再訪率が低いという問題があった。アルバイトの多くはこの事実に当事者意識がなく、社員も日常の業務に忙殺され対処が難しかった。しかし私は、この問題の解決を目指すことは将来マーケティング職に従事する際に役立つと考えた。そこでまずチームの結成を試みた。マーケティングに興味を持っていたアルバイトに私の考えと危機感を率直に話したところ、2名の賛同を得ることができ、組織することが出来た。チーム内で私は仮説立案や調査を目的に近隣の店舗に出向き原因を探った。その結果、再訪率が低い原因は顧客の求めているメニュー内容を従業員が把握できていないことであると判明した。そこで公式アプリ上にアンケートフォームを設置し、お客様要望を回収することにした。アンケート結果から新たにメニューを5品追加した。 これにより客の意見を反映してくれる店という評判が広まり、元々10%だった再訪率が一般的な40%まで劇的に向上した。
AさんのESの論理構成は問題なく、「問題提起→原因把握→活動内容→結論」となっており話の筋は通っていると思う。しかし、経験をしていないことをESに盛り込んでいるので内容に信憑性があまり感じられないです。
①「アルバイトに私の考えと危機感を率直に話したところ、2名の賛同を得ることができ、組織することが出来た」
この部分では、本当に組織する必要があるようなレベルのプロジェクトなのか?と思ってしまいます。
②「仮説立案や調査を目的に近隣の店舗に出向き原因を探った。その結果、再訪率が低い原因は顧客の求めているメニュー内容を従業員が把握できていないこと」
店舗に赴くことで、なぜ自社の従業員が顧客の求めているメニューを把握できていないと思ったのか?と疑問に残ります。もし、取り組みをしているのであれば、もっと具体的な話が出てきても良いでしょう。
③「アンケート結果から新たにメニューを5品追加」
どんな内容のアンケートをとったのか?また、そのアンケートはなぜ信憑性があったのか?などと疑問が残ります。
④「10%だった再訪率が一般的な40%まで劇的に向上」
居酒屋に行ったことがある人ならわかると思うのですが、顧客はアカウントを持っているわけではないので、リピート率を測定することはほぼ不可能です。「顔見知りの方が増えた」というレベルならわかりますが、正確な数値が出ているあたり怪しいと感じます。
上記のESに関して言えることは、自分が活動をしていないため、活動内容を具体化することが困難であり、複数の取り組みを抽象的に描いたという傾向があると思います。そのため、活動内容(①〜③)を減らし具体化することで信憑性を向上させる必要があるのではないか?と感じます。
居酒屋バイト未経験BさんのES
アルバイト先の居酒屋ではお客様のリピート率が低いことによって売り上げが過去最低に至っており、これを改善することが私の大きな挑戦だった。 アンケート結果によると、お客様への料理の提供時間への不満が最も多いことがわかり、それが原因でお客様のリピート率が低い考えた。 また調理場を観察したところ、料理の提供時間の遅さの原因は店員が調理場での行き来が多くなっている部分にあるということが分かった。 そこで調理場の物品の配置を、料理の提供を早くできるように一新した。 具体的には、まず全てのメニューにおいて作成ステップと必要なものを列挙した。 次に料理作成の全ステップにおいて、店員の往復が極力少なくなるように物品配置を変更した。 その結果、料理の提供時間を平均して半分にすることができ、お客様のリピート率を向上させることによって売り上げ回復に貢献することができた。
上記のESは本当に経験したことがない人が書いたんだなとわかってしまうESです。なぜなら、調理場の効率化をしても「料理の提供時間の高速化」を実現できるとは思えない内容だったからです。
①原因は店員が調理場での行き来が多くなっている部分にある
調理場は結構狭いと思いますし、「調理場の行き来が原因で、そこまで作業が遅くなる」とも思えません。もっと根本的な原因があるのではないか?と思います。
例えば、「店が5階建てで、キッチンが1階にしかなく、上階に届けるのに時間がかかる」とか、「フードメニューが多すぎて、キッチンが把握できていないためマイナーメニューの提供が遅れている」などの方が、まだ信憑性があるような気がします。
②全てのメニューにおいて作成ステップと必要なものを列挙した。 次に料理作成の全ステップにおいて、店員の往復が極力少なくなるように物品配置を変更
具体性に欠けており、本当に実行したのか怪しいなと思ってしまいます。
例えば、「キッチンスタッフが80%新人で、毎日1人しか一年以上経験している人がいない」という状況下で、「よく出る商品の作り方をマニュアル化した」という説明であれば、少し説得力が増しますし、
さらには、「どの冷蔵庫に何が入っているかイラスト付きで張り紙をすることで、覚えていなくいても商材を簡単取り出せるようになった」などと記載されていれば、オリジナリティを持って自主的に活動したんだなとも感じます。
③料理の提供時間を平均して半分にすることができ
もっとも怪しいのがこの部分で、「誰かがストップウォッチで測っていたのか?」と思ってしまいます。よく定量的に書くことは大切と言われますが、どうやって計測したの?と思われることは書かない方が無難です。
このESの特徴は、具体的に活動内容を書こうとした結果、経験がないため、経験者から見ると違和感しかないESになってしまったと言えます。また、Aさんと同様で、活動内容に信憑性がないので、自分の取り組んだ「力を入れた箇所」をもっと説明する必要があります。
居酒屋バイト未経験CさんのES
私は従兄弟が経営する居酒屋でバイトをしていた。県外のお客様が多く、「リピート率が低くなってしまう」という課題があった。仙台名物を主に取り扱い、旅行客をターゲットにしていたため、当時はリピート率が低くても成り立っていた。しかしコロナの影響で観光客は急激に減少し、売上が激減してしまった。そのため、店の方針を「地元民が楽しめる居酒屋」に変更し、リピート率を向上させることで売上を上昇させることにした。大きな問題は、名物や特産品をメインで扱っていたため、料理単価が他の店と比べて高く、他の店よりも費用がかかるお店だった。そのため、フードの単価を下げるため、料理のサイズを小さくしたり、原価の高いフードメニューを無くしたりした。また会員制を導入し、来店回数によりランクが上がり、ドリンク全ての割引率が上がる仕組みを導入した。その結果、地元民から繰り返し選ばれる居酒屋になり、コロナ禍でも売上を保つことができた。
このESはうまく誤魔化して書いてあり、一見論理構造も通っているように思えます。しかし、今回聞かれているのは、「あなたが学生時代にチャレンジしたことや困難を乗り越えた経験の中で、一番頑張ったと思えることを教えてください。」なんです。太字の前までは、原因分析となっており、活動内容が見えてきません。Cさんの活動は太字の部分だけでおり、設問に回答しているのは実質的にここだけになります。
このESから言えることは、経験していないので、一番ストーリーを作りやすい一般常識や世論を使い原因分析を膨らませて、あたかももっともらしいESを書いているという特徴があると言えます。もちろん100%ダメとは言いませんが、本来質問で聞かれていることに回答するのであれば、汗を書いて頑張ったエピソードを入れる方が、信憑性は上がるのではないでしょうか?
居酒屋バイト経験者DさんのES
アルバイトをしていた居酒屋で、お客様との会話を増やすノウハウを共有しリピート率の向上に取り組んだ。 アルバイト先の居酒屋は、お客様のリピート率が低く、固定客がつかないという課題があった。中でも少人数のお客様のリピート率が低かったため、お客様との会話が定型的なやりとりにとどまってしまい、また来たいと思えるような特別感を与えられていないことが原因であると考えた。そこで、必要なやりとりに加えて、定型外の会話をすることに取り組んだ。具体的には、その日のメニューから個人的なおすすめを一つ伝えたり、旅行中のお客様にはどこから来たのかを尋ねたりといった雑談をやり取りに加えた。また、これによりその後のお客様との会話が増えることを実感したため、自分が使っていた雑談のトピックをまとめ、他のアルバイトにも共有した。その結果、店全体として少人数のお客様とのコミュニケーションを増やし、リピート率を向上させることができた。
このESは太字の部分が原因と具体的な活動になっており、半分以上が「力を入れたことへの説明」に使われている。そのため、何を頑張ったのかを把握しやすいですし、実際に居酒屋で働いていたからこそ言えるエピソードがあり信憑性が高いです。欲をいうのであれば、「雑談トピックの共有」についてはさらに深ぼるか、消去して独自の取り組み(お客との交流について)をもっと盛り込んだ方が内容がもっと具体化し、取り組み自体にさらに納得感が出たかなと思いますが、信憑性は非常に高いESだと思います。
※今回は400字という短い字数です「ガクチカ」だったので、具体化をすることが非常に難しいのも事実です。
ですが、できる限りオリジナリティを出すという意味で具体化はしていくべきです。
経験していないことは具体的に書けない
自分が経験していないことを、具体化してリアリティを持たせることは非常に難しいです。作り話と本当の話にはそれなりの差異が出てしまいます。そのため、ESを書く際には自分の経験したことを深掘りし、実際に感じたことや悩んだことを具体化して努力値を見せていくことを考えてみてください。
また、まだ自分が本気で力を入れたことがない方は、バイトでも部活でも良いので、何か1つに疑問を持ち、自分の力で解決する努力をしてみると、ESのネタが生まれてくると思います。
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